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貞水先生、愛山でございます。最後に先生とお会いしたのは春陽の真打昇進披露パーティーでしたから、もう6年以上前のことになります。大変にご無沙汰いたしております。 わたしは入門当初から所属する協会は違うというのに先生にはずいぶん可愛がっていただきました。 まだ先生のところのお弟子さんが定着しなかった頃の話で、わたしは本牧亭での先生の会の前座を毎回つとめさせていただきましたし、お宅にも出入りをし、よく湯島界隈で飲ませてもいただきました。 「貞水先生に一番ご馳走になった若手は、このオレだ」 と、わたしはよく自慢させていただいております(笑)。 わたしは半分は先生の弟子のつもりでおりましたし、師山陽にも「君は貞水君を尊敬しているようだから移っても構わない」といわれたことさえあります。 またわたしがアルコール依存症治療のために故郷へ強制送還されたときも「ゆっくり休養するつもりで行ってらっしゃい。また会おう」と楽屋でかけていただいた温かいお言葉は生涯忘れません。復帰してからも何かとお気にかけていただきました。 わたしは先生の白浪物の野太い調子が大好きで、評論家の田邊孝治さんから勧められて「千代田の白浪」を高座にかけるようになりましたのも、先生の真似をしたいという一心からでした。 でもダメでした(笑)。先生の修行は筋金入りで、まるで鍛えが違います。わたしなどが足元に及ぶものではありません。 まさに先生は平成の名人であったと思います。 ……先生に「弟子をほめないでくれ」と怒られそうですが、今の貞橘君はまだ先生の三分の一くらいの領域にしか達していませんが、これがやがて半芸にいたり、いわゆる「弟子は師の半芸に及ばず」と悟り、そこで貞水離れをすればいい講釈師になると思います……。 今冬は先生からいただいた緑の羽織(わたしの家紋も先生と同じ丸に鷹の葉の打違いです)をメインに身につけさせていただきます。 先生、わたしもおっつけそちらにまいります。その折りにはまた先生の会の前をつとめさせてください。よろしくお願い申し上げます。 先生、本当に、本当に長い間有難うございました。
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講談師 神田愛山の公式ホームページ
by aizan49222
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