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強心臓
 これは客席にはおわかりにならない話ですが、その日トリをとる者の特権で楽屋にネタ出しをすることがあります。
 つまり「今日オレはトリでコレをやりたいので、他の者は遠慮をするように」ということを事前に伝えるわけです。
 前座はネタ帳と、このトリネタを書いた付箋紙を出演者一同に示します。
 で、過日わたしが『赤穂義士外伝忠僕元助』をネタ出ししましたところ、わたしの前の出番の新劇系女流講釈師が義士伝にもろにネタがツく「徂徠豆腐」を読み始めたではありませんか!

 ……元禄十五年十二月十四日会稽山に越王が恥辱をそそぐ大石の山と川との合言葉末代めでたき武人の亀鑑……。

 高座を下りた彼女は「ネタがツいちゃって申し訳ございません。確信犯でした」と、わたしにわびます。
 つまり彼女はこの「徂徠豆腐」をどうしてもネタ下ろししたくて、その日高座にかける他のネタを用意して(サラって)こなかったのです。
 ですからわたしが義士伝のネタ出しをしても、他のネタに変えられなかったのです。
 まるで融通が利かずに、プロとして恥ずかしい限りです。
 トリのわたしがネタを変えましたが、彼女に悪びれた様子は、すこしもありません。
 わびたのは口先だけのことで、この強心臓が新劇系女流講釈師たちの大きな特徴なのです。
by aizan49222 | 2015-12-22 13:28 | 愛山メッセージ


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