今回の独演会より我が二代目神田山陽一門のお家芸「徳川天一坊」を連続で申し上げることにいたします。
この講談は古典の中でも最高難度の読み物です。
全二十席ですが、今回はその一席目。外伝のような物語からスタートを切ります。
回を進めていく先々途中からお聴きになられても、充分にご堪能いただけるように演じますが、やはり一席目から聴いていただくことに越したことはありません。
天一坊と名を改め、徳川八百万石を手中に収めんものと企んだ一人の若者。紀州の修験者源氏坊階行(げんじぼうかいぎょう)。
希代の大悪党といわれますが、わたしはこの天一坊を憎むことができません。
まさにピカレスクロマンであります。
あの江戸川乱歩先生が、師の「徳川天一坊」に惚れ切り、『これぞまさに探偵小説』との評価を与え、講釈場に通いつめたとの逸話が残されております。
師がさも嬉しそうに、わたしに語ってくれました。
その「徳川天一坊」を、わたしの六十回目の誕生月に開く独演会から読み進めていくというのも、これも何かの因縁かもしれません。
「徳川天一坊」を聴かずして、講談の醍醐味は解りません。
極論すれば講談とは「徳川天一坊」のことなのです。
わたしの還暦祝いに付き合ってやるかとの思し召しで、ご来場のほど伏してお願い申し上げる次第です。
「神田愛山独演会」
11/29(金)19:30
らくごカフェ(神保町駅A6・神保町交差点岩波ブックセンター隣古書センタービル5F…ビル裏口エレベーターより・降りて左・千代田区神田神保町2ー3)
2000円(ブログプリント持参割引有り)
愛山演題「徳川天一坊(一)名君と名奉行」他一席