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 雨の日の散歩の途中に立ち寄った地域センターを出ようとしたところ、傘立てに入れておいたワンタッチの傘がありません。
 たまたまバッグに折り畳み傘がありましたからよかったものの、こんな公共の施設でも悪さを働く奴がいるのかと、何とも後味の悪い思いをしながらも散歩を続け、駅前にある大型スーパーのフリースペースで休んでおりました。
 と、このときに、散歩中によく出会い、すでに顔見知りになっている老齢の男性が、わたしの傘を手にして入店し、フリースペースの、わたしの近くの椅子に座りました。
 この人とは今までに(自然に目が合ってしまったので)一度だけ挨拶を交わしたことがありますが、実に穏やかな感じの人です。
 その人がわたしの傘を持っている……。
 たしかに彼は、わたしが先ほど地域センターに入ったときには、わたしよりも先に来ていて新聞を読んでおり、わたしが気がつかないうちに先に出ていってしまいましたが、恐らくはそのときにわたしの傘を持っていってしまったのでしょう。
 しかし仮に自分の傘と間違えてしまったなら、いくら何でも、たとえ色形が似ていたにせよ、わたしの傘は柄に近いところの心棒が曲がっていて、ワンタッチではありますが、開くときには手で押し上げなければならないのです。
 ですからこうして一時間半以上の時が経てば、もういい加減に、これは自分の傘ではないと気づいてよさそうなものの、彼にはすこしも気づいた様子はありません。
 では彼は一体いつ気がつくのでしょうか……。
 彼の家族構成などはもちろん知りませんが、家に帰ったあと「お父さん(おじいちゃん)この傘違うよ」と家族にいわれて、そこで初めて気がつくのでしょうか……。
 そして家族もまたそのときに、ウチのお父さん(おじいちゃん)に認知症の気が出てきてしまったと初めて気がつくのでしょうか……。

 わたしは彼のところにいって「もしもし、それはわたしの傘ですよ」とはいいませんでした。
 それをいおうものなら、あまりにも突然の申し立てすぎて(柄に近いところの心棒が曲がっていることを訴えれば、わたしの傘であることは解りましょうが)今度はわたしが胡散臭い男として周囲の人に騒がれ、警察に突き出されてしまう可能性もあるという思いが脳裏をよぎったからです。

 ……やがて彼は自分の傘と思い込んでいるわたしの傘を大事そうに持って、わたしより先にフリースペースを出ていきました……。

 まあいいでしょう。
 どうせわたしも拾ってきた傘のことですから……。
by aizan49222 | 2013-10-31 11:43 | 愛山メッセージ


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