《二度目の梅雨入り》
気象の専門家以外の誰の目からみても、五月下旬に出された「梅雨入り宣言」は間違いであったことは明らかでしょう。
まったく雨が降りません。
これは空梅雨以前の問題です。
しかし気象予報士たちは現状を「梅雨の中休み」と言い続けています。
雨が降り続いていればこその梅雨の中休みなのであって、雨が降っていないのですから、中休みもヘッタクレもありません。
微笑ましいといえば微笑ましいのですが、苦肉の策の表現としか、わたしには思われません。
本当は雨乞いをしたい心境でしょうに。
それにしても梅雨入りとだまされて咲いたアジサイが気の毒です。
まるで精彩がありません。
……と、今度彼らは「二度目の梅雨入り目前」という言葉を使い始めました。
これには思わず吹き出してしまいましたが、だいぶ前に「梅雨明け宣言」を撤回し、梅雨が明けないままに、その年が暮れてしまったこともありましたが、仕事はこのくらい気楽にやったほうがよいのかもしれません。
《カタツムリ》
カタツムリは移動性に乏しい動物で、ごく狭い範囲を這いずるだけで、そのまま生涯を終えてしまうそうです。
……わたしは「カタツムリ講釈師」です。
《心医者》
作家で精神科医(アルコール依存症の権威)のなだいなだ先生が亡くなられました。
わたしが真打に昇進したときの口上書に挨拶文を書いてくださった先生です。
その後共著で対談本を出させていただきました。
なだいなだと肩を並べられた嬉しさは、今でも忘れられません。
こちらの言っていることを、すべて包み込んでくれるやさしさと温かさのある先生で、まさに「心医者」でした。
わたしの愛山という名前を「それは明治時代の壮士山路愛山からきているのではないかな」と指摘してくださり、わたしの持ちネタである「蜀山人」にもアドバイスをいただきました。
新宿と北鎌倉のお宅にお邪魔したことがありますが、共に坂の多い地形で、そのことを話しましたら「そうかね」と穏やかに笑われた、その笑顔が忘れられません。
酒に病み、なだいなだに助けられた大勢の方々と共に、心よりご冥福をお祈り申し上げます。