今度の角界の騒動で「谷風の情相撲」ができなくなってしまいました。これは落語の「佐野山」と同じですが、寛政時代の名横綱谷風は独断で病気の父親をもつ貧しい力士の佐野山に勝ちを譲って多額の懸賞金を受け取らせ、佐野山はその金を元手に廃業後故郷で料亭を開き、父親の看病ができたという一席で、わたしは講談に馴染みの薄いお客さんを前にしたとききには必ずこの読み物を演じてきました。大変にわかりやすく、またよくウケる講談で、前座の頃から「谷風の情相撲」にはお世話になってきました。
しかしいかに情とはいえ相手に勝ちを譲るわけですから、こういうご時世では、あまりにも生々しくて、もうやれないでしょう(気にしないで演じる豪の者もおりますが、ま、それはそれ)。
まったくありえない荒唐無稽な滑稽講談として、今までは「谷風の情相撲」を聴いていただきましたが、もはやそれもかなわぬ夢になりました。
釈界(講談会)は思わぬ余波を受けましたが、しかし「谷風の情相撲」以外の相撲講談ならば(ウケるウケないはべつにしても)やれます。
で、今度のコタン講談会で「越の海の出世相撲」をやります。
この読み物は何ともバカバカしく、古きよき時代の相撲講談としてお楽しみいただけます。
師二代目山陽が落語の席で、よくやっておりました。
そしてもう一席は「(講談私小説)角袖」で、昨年の暮れにネタ下ろししたものの改訂版です。
無名の講釈師品川陽吉の日常を聞いてあげてください。
またわたしにしてはとても珍しいことですが、終演後は懇親会を開きます(別途料金)。
どうかライブハウスでの講談をお楽しみください。
「第14回コタン講談会」3/4(金)19:30
・ライブハウス四谷コタン(新宿区若葉1ー9金峰ビル101)
・2000円+ワンドリンクオーダー制(ブログプリント持参割引なし)
・四ッ谷駅(四ッ谷見附交差点側)を出て新宿通りを上智大学とは反対方向に直進5分ほど歩くと左側にジョナサンあり左折初角を右折突き当たりを左折15m先左側ビル~
・「前講」神門久子・「(寛政力士伝)越の海の出世相撲」「(講談私小説)角袖」神田愛山