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わたしの強迫神経症~印鑑編
 肉体の病気とは違い、神経症という病は、なかなかご理解いただけないかもしれませんが、わたしの強迫神経症のことを、とても恥ずかしいことではあるのですが、できるだけご理解いただけるように書いてみます。

 強迫神経症とは「普通の人が100グラムの重圧ですませられる気になることが1キロの重圧となって頭全体に広がり、しかもその観念が命令形となって実行を迫り、その観念を振り払おうとすればするほど、逆に衝き動かされるようにしてその命令に従い、同じ行動を何度も繰り返してしまう病気」と認識していただければ、大体のところはイメージしていただけるかと思います。

 よく心配事にはキリがないといわれ、人はほどのよいところで心配することを切り上げますが、切り上げることができずに、心配事のキリの中で悶え、さ迷い歩いているのが強迫神経症者なのです。
 わたしの症状は色々ありますが、その中のひとつに印鑑恐怖があります。
 わたしは公式書類への捺印が大の苦手で、かすれてはいけない、曲がってはいけない、欠けてはいけないという意識が強く働き、冷静になろうとすればするほど激しく手が震えて、何とか捺印を終えても、その後印鑑を上げられなくなってしまいます。

 しかし宅配便受け取りや、回覧版に押印するときには、手は震えません。普通に押せます。
 ですからわたしは印を押すことが苦手なのではなくて、役所への届け出や確定申告、不動産屋から送られてくるアパートの契約更新等の書類が怖いのです。
 わたしにとっての役所や税務署は国家権力の象徴であり、不動産屋は、わたしの生殺与奪の権利を握っています。

 つまりわたしは記入ミスを恐れているわけではなく、書類を書き損じることによって生ずる彼らの報復攻撃を怖がっているのです。
 国家権力を敵にまわせば逮捕されてしまいますし、不動産屋の指示通りに書類を書かなければ、わたしは部屋を追い出されて死んでしまいます。
 この両者は、わたしに有無をいわせません。わたしはこの両者に対してはまったくの無力なのです。この両者に腹を立てられたら、わたしは地面に額をこすりつけて許しを乞う以外にはありません。

 ……ここまで読まれて、わたしがまるで子供のような被害妄想に冒されているというご指摘があれば、それは甘受しますが、とにかくわたしの心の奥底では、そういうことを怖がっているのです。だから手が震えるのです。
 宅配便受け取りや、回覧版の押印には、逮捕や生死の問題はからみません。だから気楽に判を押せるのです。
 幼少期に一度として親にほめられたことのなかったわたしは、世の中に対して異常なほどの警戒心を抱き、たえず身構えて生きてきました。
 そしていつのまにかわたしは「緊張というフィルター」を通さないことには、世の中を見ることができなくなってしまったのです。
 つまりわたしは平常心からして緊張しているわけですから、ごく些細なことが、どうしても過度に不安になり、また怯えてしまいます。パニック症ともいわれます。

 しかしわたしはとにもかくにも今までこのフィルターを使って生きてきたわけですから、それはそれで馴染みもあって悪いことばかりでもありませんでしたから、今さら新しいフィルターに交換しろといわれても、なかなかに厄介な話なのです。
 それどころか新しいフィルターに交換したら、わたしの人格が崩壊してしまうかもしれません。
 要するにわたしの強迫神経症の原因は、わたし自身の生い立ちにあることは火を見るよりも明らかなのです。
 ……でも考えてみれば誰しもが、その場に直面すると緊張を強いられる苦手なものはあるわけです。

 が、わたしのように緊張を強いられる場面の半年も一年も前から緊張しているということは、ひょっとするとわたしは緊張する自分に緊張しているのかもしれません。

 わたしは緊張する自分を否定したいのかもしれません。
 しかしそれがかえって逆効果となり、いわゆる不安の先取りで、長期にわたる過度の緊張状態となってしまうのかもしれません。

たとえばわたしが自主制作しているCDでも、講談を部屋で録音するときに「絶対に間違えてはいけない!」と、間違えるかもしれない自分を打ち消して、完全無欠な講談を演じようとすればするほど、逆に緊張して間違えてしまいます。

 わたしは「間違いと緊張」を否定せずに、自我に組み込まなければいけないのです。
……実はあとひと月もすればアパートの契約更新書類が送られてくるのです(笑)。
 ですからわたしはすでに始まっている気の動転を鎮めるために、今、この原稿を書いているのです(笑)。
 さて今回の手の震えはどのくらいになりましょうか……(笑)。
by aizan49222 | 2010-11-17 14:29 | 愛山メッセージ


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