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小林桂樹さん逝く
小林桂樹さんがお亡くなりになられました。
 昭和三十年代から四十年代前半にかけての大ヒット映画「社長シリーズ」は、森繁久弥さんが社長で、小林さんが秘書役で、二人がからむ絶妙の間と呼吸。
 それは演技指導などで生まれるものではなく、そのコンビネーションは他に類をみません。
また共演者も、毎回一風変わった人物を演じるフランキー堺さん、宴会部長の三木のり平さん、生真面目重役の加東大介さんという芸達者な方々に加えて、そうそうたる女優陣がワキをかため、まさに社長シリーズは最高級の大人の喜劇でした。
森繁さんの代表作が社長シリーズならば、小林さんの代表作も社長シリーズだと、わたしは思っています。

 ……もう七、八年前になりましょうか。仕事の失敗から激しく気分が落ち込み、どうにもならなくなってしまいましたときに、わたしは三日間一歩も外出せずに社長シリーズのビデオをBGMとして精神安定剤の代わりに流し続け、何とか平常心をとりもどして事なきを得たことがあります。

そのくらいですからわたしは今でも、たとえばデパートに入り、通路を曲がりますと、秘書の小林さんを従えた森繁社長とバッタリ出会いそうな錯覚にとらわれてしまいます(シリーズの中に、こういう設定の作品がありました)。
プロ好みの受け身の演技を、たっぷりと楽しませていただきました。
 小林さんは戦争中のデビューで「いきなり主役に抜擢されましたが、戦後はまた通行人から始めました」と承っております。
 本当に長い間お疲れさまでございました。合掌。
by aizan49222 | 2010-09-26 17:11 | 愛山メッセージ


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