短日や罪人(つみびと)のごとく飯を食む
小学三、四年の頃だったと思います。わたしは弟と一緒に炬燵に入って画用紙に絵を描いておりました。もちろん落書きですが、その頃のわたしは武器を充分に備えた戦車のような乗り物の中で一人で暮らすことを夢想していて、自分の住まいでもあり、いつでも戦闘状態に入れるその乗り物を好んで描いていたのです。
台所では母親が夕食の支度をしています。
と、突然、母親が使っている包丁の音が、いつのまにかわたしに向かって、「いい加減にしろ。おまえは人に料理をしてもらえるような者じゃないんだ。おまえは邪魔な人間なんだ」といっているように聞こえてきてしまったのです。
そのときの情景を、わたしは今でもはっきりと覚えています。
……その後も、わたしを責める音は続いて、母親が部屋に掃除機をかける音や、父親がベランダに干した布団を叩く音が、またもわたしに向かって、「おまえは人に何かをしてもらえる者じゃないんだ。いい加減にしろ」といって責めてくるのです。
そしてこの音(声)が聞こえてくると、わたしは「ごめんなさい。こんなぼくですけれど、今は子供でお金も稼げませんし、何もできないのです。お願いですからご飯をつくってください。すこしはお手伝いもしますから、お掃除をしてください」とうなだれ、心が萎縮してしまうのです。
得体の知れない罪悪感が、このときから芽生えてきました。