携帯電話を入手してから5年が経ちましたが、わたしがいちばん勉強になりましたのは
「世の中というものは、いちいち返事をしなくてもいいんだ」ということであります。
(わたしはパソコンメールはやりませんから)必然携帯でメールのやりとりをする以外にはないのですが、
たとえ返事を求める内容のメールを送っても、返事をよこさない人が多いことには、ずいぶん驚かされました。
こういうことは、すくなくともわたしの常識にはありません。
しかも講談の若い人たちからも返事がないときがあるのです。
わたしはメールを送っても、一日は返事を待ちます。
しかし何日経過しても返事をよこさない同業の若い人たちには、本当に腹が立ちます。
わたしの依頼に即答できなければ、とりあえずその旨を記した返事を送るのが当然の礼儀だと思われますが、
どうも彼らの感覚はそうではないようなのです。
ですからそういう若い人たちには、こちらから改めて「ご多用中まことに恐れ入りますが」と
催促メールを出さない限り、返事はもらえません。
……しかし今は、その怒りもとおりこしてしまい、逆に、こういう連中は決して神経症にはならないだろうと感心して、
羨望の眼差しで眺めています。
で、わたしも彼らの真似をして、気が向かなければ儀礼的な返事のためだけの返事を送ることはやめにしました。
たしかに楽ですね。
どうやらわたしはこの年齢となり、ようやく「返事をしないという返事」を覚えたようです。