わたしは子供の頃から童謡の「春よ来い」と「雛祭り」が苦手で、この歌を聞くたびに腹の底から突き上げてくるような焦燥感にとらわれてしまうのです。
ですから新生活のスタートとされる春が大嫌いで、新しい教科書の匂いも不愉快きわまりないものでした。将来に対する不安に怯えてしまうのです。
その代わり一年の終わりの気配が漂う晩秋の淋しさが大好きでしたが、ここにいたって春を待つ気分を心地よく感じるようになってきました。
つまりわたしの思考回路に変化が芽生えてきたのです。
そしてそれは4年前からカラオケを始めたことに起因していると思います。
昔から「常軌を逸した音痴」(宝井琴調並み)で、人前で歌ったことなどなく、それでもナツメロと青春歌謡が大好きで、
何とか「並みの音痴」くらいにはなってみたいものだと思っていたわたしを、あるアマ弟子さんが無理やりにカラオケに誘い、そしてマイクを握らせてしまったのです。
わたしの人生は、このあたりから、すこし流れが変わってきたようです。
自分の苦手なものにチャレンジして、新しいことを始められた喜びが、春を待ち遠しく思う気分にさせてくれたのかもしれません。
今のわたしは時折「春よ来い」と「雛祭り」を口ずさんでいます。